とっておきの熊野 ふるさとの伝統の技術体験講座その四 ツアー記録

『藁蓑(わらみの)作り』
〜消え去ろうとしている技を引き継ぐ〜

実施日:平成18年2月19日(日)、3月5日(日) 

場所: 紀南ツアーデザインセンター

参加者: 5名 

紀南ツアーデザインセンターの中に、菅(すげ)で編んだ蓑が飾ってあります。これは所有者の方のご好意でお借りしているものですが、そのお宅ではお父様の代から「これは貴重なものだから、いたずらに触ってはいけない」と言われて、大切に保管してきたものなのだそうです。その編み方の精巧さに驚くとともに、いろいろな方に話を伺うと、こういう民具を作る人や技術がどんどん失われつつあることを知りました。このままではいけない。紀南ツアーデザインセンターで蓑作りの技術を学ぶ講座を開き、熊野の蓑作りの伝統を継承するようにしていきたいと考え、今回の講座が誕生しました。

しかし、講座の準備のために蓑作りの指導をしていただく講師を探してわかったことは、技術を持っている人がもはやほとんどいないという事実でした。昭和一桁台生まれの人でも見たことのある人はいても、作ったことがあるという人がいないのです。つまり、終戦後すぐから、すでに雨具としての合羽が普及し始め、蓑を実用品として使ったり作ったりしていたのは、概ね大正生まれ以前の人のようなのです。

昨年の夏、そのように講師探しに行き詰まっていたとき、ある方から「仲森増穂さんなら作れるんではないか」と言われたのをきっかけに、仲森さんに相談してみました。すると意外にも「できると思うよ」という返事が返ってきました。すぐさま、「一つ試しに作ってみてください」とお願いして、しばらくお返事をお待ちしていました。

11月、突然仲森さんが紀南ツアーデザインセンターに立ち寄られ、藁(わら)で編んだ作りたての蓑を持ってきてくださいました。「60年ぶりに作ってみたよ」ということですが、見事な藁蓑でした。背中は雨が滲み込まずに下に流れるように藁が重層になっており、裏側には菅蓑とは異なるパターンの編目が見えていました。肩の上にも雨よけがあり、前には胸当てが用意されています。ご本人が着用された姿を見ての私の感想は、実は“田舎っぽい”ではなく、“粋(いき)”でした。本当に格好良いと思いました。藁蓑は雨具ではなく、今の時代に人々が求めているなつかしさや手作りのあたたかさにあふれた、すてきな飾り物になっていると感じました。そして、すぐに講座開講の準備にとりかかったのは、言うまでもありません。

講座の参加者を募集して、真っ先に応募してくださった5名の方を対象に、2月19日と3月5日の2回にわたり、講座が行われました。5名の方の年齢を若い順に並べてみると、26歳、66歳、70歳、70歳、81歳です。仲森さんが82歳ですから、平均年齢は約66歳となります。老若男女が丸2日間、藁をたたくことから始め、藁蓑作りの全工程に取組みました。無理がたたって肩があがらなくなったとか、以前からよくない腰が痛いとかの声も聞かれましたが、人生の達人のような皆様が集まり、とても楽しい時間があっという間に過ぎました。当初2日間とも朝9時からお昼までの講座の予定でしたが、急遽昼食の出前を取り、1回目は午後3時30まで、2回目は午後4時まで時間延長しての講座となりました。
主な工程は次のとおりです。
@藁をたたく
A縄をなう
B背の部分を作る
C内側から下へと伸ばしていく
D胸当てを作る
E背と胸当てをつなげて、ほぼ完成
時間の都合で完全に作り上げることができなかったのですが、あとは自宅に戻って自分でできる作業が一つあるだけです。講師の仲森さんの判断で、5名の参加者の方は完全に藁蓑作りの技術をマスターされたということで、「ふるさとの伝統の技術修得認定証(藁蓑作り)」が授与されました。認定証には次の文章が書かれています。

あなたは「とっておきの熊野 ふるさとの技術体験講座『藁蓑作り』」に参加され、熱心に藁蓑の制作に取り組まれた結果、藁蓑作りの技術を完全に修得されたことを認定します。今後はこの技術を保持するために藁蓑の制作を継続され、ふるさと熊野の伝統文化の継承に貢献されることを期待します。(紀南ツアーデザインセンター)

参加者の皆さんは「藁蓑作りは想像以上に難しい作業だった」「忘れられない、すばらしい体験をすることができた」「講師の仲森さんがやさしく、とても親切にしてくださった」と感想を述べてくださいました。仲森さんも参加者の方々の熱心な作業ぶりに感心され、参加者が喜んでいただいたことに満足されたようです。

作っている最中、参加者の方々と「出来上がったら、これを着て町の中を歩いてみよう」と冗談を言っていました。残念ながらもう少しで完成というところで記念撮影をして終了となりましたが、心のどこかで本当に外を歩いてみてもよいかも・・・という気持ちがあったように感じました。伝統技術の一端を学ぶということは、それだけ誇りに思えることなのでしょう。「藁蓑以外の藁細工に挑戦してみたい」という方もいらっしゃいました。

また、藁蓑を作りながら、昔の暮らしの様子を思い出したり想像したりしてなつかしく思うと同時に、藁という材料を活用することの価値や、手作りの道具を使うことの大切さに思いを寄せました。「昔は誰も教えてくれなくても、何でも自分から学んでいったんだよ」と参加者の方が言っていましたが、講座という形で学ぶよりも、本当は地域の人々が当たり前のようにこのような伝統技術を身につけていることが理想なのだと思いました。

(記録 橋川)

以上


三重・紀南
エコツーリズム
通信
三重・紀南
エコツーリズム

Web通信
常設ツアー
熊野川・北山川
カヌーツーリング
常設ツアー
熊野川町嶋津の
山歩き
木本 街歩き
地域の方による街案内
紀南ツアーデザイン
センター

ご連絡ください
季節植物
日記
神仏あれこれ
熊野
facebook